「ほら」
いつものように、黄昏時に公園の噴水の前にあるベンチで座っていると、これもまたいつものように、サヴァンが現れた。
ただいつもと違うのは、飴を一つ僕に差し出していること。
おまけに彼は少し、誇らしそうな顔つきだ。
「…?…ありがとう……?」
何故それをくれたのか、など疑問に思いつつも、包装紙から取り出して口に放り込む。
…甘い。
「……凄く甘いんだけど、」
「…苺味だからな、」
さっきそこで配っていたんだ、と少し苦笑しながら、彼はぼやいた。
(…今日、何か特別な行事があったのだろうか、)
彼から何か物を貰うのは、とても珍しいことなのだ。
思案していると、公園の周りに立ち並ぶ家の玄関脇に、ジャックオランタンが飾られていることに気付いた。
「……嗚呼、そうか、今日は10月31日だったね、…サヴァン、Trick or treat!」
「…お前な、…さっき私が君に何をやったか覚えていないのかね?」
その口調に反して、少し身構える素振りをみせる彼。
(…そんなに僕に悪戯されるのが怖いのだろうか、)
彼の強張った面持ちが面白く、僕は彼に微笑みと悪戯の前ふりを、
「さぁ…覚えていないなぁ…ねぇ、お菓子をくれないってことは悪戯してもいい、…ってことだよね?」
爆死。
この記事にトラックバックする